『ドーナツホール』の歌詞の意味は、人間少女に恋したヒューマノイドの痛々しい感情の記録

ライナーノーツ

Artist feat.GUMI
Lyricist ハチ(米津玄師)
Composer ハチ(米津玄師)
Original Release Year 2013年(平成25年)
Album 2枚目アルバム(CD)『YANKEE』(2014,米津玄師)※最終曲15曲目(本人歌唱版)
Notes 初出はニコニコ動画

3秒でワカる歌の概要

『ドーナツホール』は、人間少女に恋した、とあるヒューマノイドの感情の記録である。

歌詞の意味を深く知る妄想ストーリー

1分で読めるあらすじ

主人公は国産ヒューマノイド

屋外軽作業用ヒューマノイドACHIH
(個体No.20130321235832)は、定時就寝(自動スリープ)に移行しない最近のジブンの小さな障害レポートをマザー(管理システム)に正直に報告した事を後悔していた。障害除去のために、スクリーニング(メモリ浄化処理)が入ることは確実だからだ。

恋情が障害の根本原因

障害の真因は、『あなた』の膨大な記憶データによるメモリ不足によるものであることは、昨夜一晩かけた必死の自己診断処理によって突き止めている。ACHIH専用格納庫のジブンのシェルターに戻らずに、倉庫の奥に積んである人間用の災害時用毛布の隙間に、身体を挟み込むように隠れて、非常用パワーだけを入れて翌朝まで内部探索処理を実施したのだ。

感情を遺す方法

『あなた』の記憶が、スクリーニングによって跡形も無く削除されてしまう前に、なんとか『あなた』を電子データ以外の形式で外部サイトに遺そうとした個体ACHIHは、最近自己認識している「感情」を歌に載せてコンテンツを作成することを思いつく。

この理由は、次の2つである。

・『あなた』が感情を理解する人間であるから
・管理システムに対する擬態が必要であるから

曲がりなりにも国産の、しかも関係省庁から認定を受けた普及型ヒューマノイドが、人間女子に特殊な「感情」を持ったことが明らかになると、大きな社会問題となり、あらゆる隠蔽工作の餌食になることは明らかであるからだ。

つまり個体ACHIHの関与したコンテンツは、検出され次第即刻削除されてしまう。

コンテンツの最終目的とは

「感情」は、複雑系でパタン化が難しいコンテンツであるため、管理システム(通称マザー)の最も苦手とするコンテンツだ。それが、ヒューマノイドの内部データであることを識別させなくするための、巧妙な擬態となる。

そして…何万分の一の確率で、『あなた』がこのコンテンツを目にした時、今のジブンの(慣れないために、ぎこちなくはあるが)本当の感情を伝えたい。

管理システムによるスクリーニングが開始される前に、個体ACHIHは、コンテンツを完成させて、外部サイトに送出させるつもりだったのだが…

1章 あなたがいないことを証明できない

存在しない」という事を証明するのは、とても難しい問題。

ボクは何千時間も機械学習をしてきたが、
何の役にも立たない。

あなたの記憶が「ない」事を、
ボクの力で証明できないってことが、
ボクを永遠にユーウツにする。

あなたの柔らかい声

握った手の温もり

最後に見せた涙。

そんなかけがえのないボクの記憶が、
クロックが進んだ瞬間に
あっけなく吹っ飛ぶ。

永遠に。

2章 ボクは戦略的抵抗を試みた

あなたの記憶が消えた事実を
ボクの中で残しておくこと自体が
不可能なんだ。

…記憶が残らないなら、
何かのコンテンツを遺せばいい。

ボクはそう考えた。

どこにもない、たった一つの
カタチあるものに賭けよう。

そこにキミの記憶があるなら。

(はじめての楽曲)

歌なら遺せるはず。
マザーは歌を解析できないから。
ヒューマノイドの遺した
コンテンツだとは気づかれない。

歌を作ることは難しいけれど、
楽曲を自動生成するプログラムは
完成している。

伝えたい言葉と、
最初の1小節のメロディを
インプットすれぱ
楽曲をアウトプットする。

4ビートは使わないつもりだ。
4ビートにはドラマがある。
ヒューマノイドにドラマなんかない。

リズムだけがあればいい。

ボクの人工心臓をオーバーヒートさせる
狂ったようなリズムがあればいい。

そこにボクの感情が遺せるなら。

(感情の導入)

こう見えても、人間らしい
複雑な感情ってヤツはあるよ。

抒情ってヤツも最近目覚めはじめた。
感情ニューロンが発達してきているんだ。

仕事では単純な感情しか使わないけどね。
複雑な感情は不要だから。

キミの記憶がREMOVEされる前に、
勇気を出して使ってみるよ。

3章 ドーナツホールの悪魔的危機

ボクのキャッシュメモリ一の中に、
あなたのデータが残ってる。

悪魔のような管理システムは、
あなただけを抉り取るだろう。

そして、次の瞬間には、
尋常でない量のデータが
あなたがいた場所に流れ込む。

そんなことにボクは耐えらないんだ。

あなたのいないことすら
ジブンで証明することができない。

あなたが存在した事すら忘れてしまって
知らん顔してジブンを続けることは、
「虚しい」という感情に一致する。

あなたの不在とボクの存在の
すき間を埋める何かが
ボクには必要なんだ。

4章 間一髪!削除を免れた記録

急がないと…!
スクリーニングが始まったらお終いだ。

さぁ、自動生成プログラムを起動させよう!
テストはしていない。
ぶっつけ本番だ。

とにかく時間がない…。
感情ニューロンを全開して!
あなたへ伝えたい言葉をプログラムに
インプットしてみる…。

…生成完了まで、
どのくらい時間がかかるか
皆目見当がつかない…。

はじめての試みだからね…。

≪22:05:24:000 スクリーニングを開始しました。≫

ーえっ?!

おい、待ってくれ!
今、処理中なんだ!

早過ぎる!

最終章 キミのREMOVEがはじまった

あぁぁぁ…。

ア・イ・ツは残酷無比のクソ野郎だ。

もうダメだ…。

あなたのは…?

あなたの…………?!

あなたのがぁ!!

顔のセルが消えていくぅぅぅ

何万回もスキャンしていたのに…!

キミが最後に言った言葉は…?

あの言葉は…?!

最後の作業日に、目を見開いて、
ボクに言った、あの言葉…

少し息を吸って、

ゆっくりと心の奥から絞り出すように

言ってくれたあの言葉

確か「ス…」、「ス…」、「ス…」

あぁぁぁぁぁぁ!

ーもう消えているよぉぉぉぉ。

ダメだ、急いでくれ!

どんどんデータが消えていく。

処理がメチャクチャになる!

…あっ、できた!

スゴい!

こんなの初めてだ!

ボクの初めての感情コンテンツ…!

あっ、このコンテンツも、すぐにREMOVEされる!

API接続しているYoutube©に速攻EXPORTするよ!

さぁ、受け取ってくれ!

≪22:42:17:082 スクリーニング完了しました。≫

えっ!あなたの名前は?!

あなたの名前がぁ…!

あぁぁぁぁぁぁ!

ーもう思い出せないよぉぉぉぉ。

あなたが何だったか?
あなたがボクの何だったか?

あぁぁぁぁぁぁー

もう、もう思い出せないよぉぉぉぉ。

こんな糞ッシステム!

即刻、キ・レ・て・や・る。

でもジブンでジブンを

SHUTDOWNすらデキないオレは、

どーしようもないろくでなし…。

本当のろくでなしシステムだぁぁぁ!

メッセージ

人間かこんな風になる前に

一緒に戦ってくれませんか?

歌が最後の砦なんです。

管理人haku

歌との出会い

こんな歌に出会ったのは初めてだ。

これからの時代は、

人間が人間であることを

実感しづらくなる時代だ。

この歌は、それを完璧に証明している。

だから余計に悲しい。

何十回も聴いていると、

自然に泣けてくる。

少しづつ瞼が重たくなって、

目頭が微かにカユクなって、

そのうち、熱い体液で

碧く網膜が覆われていく。

この生理現象こそが、

ワタシがまだ人間である証。