globe『DEPARTURES』の歌詞の意味は男に置き去りにされた女の愛と夢の物語

globe「departures」

globeの美しい名曲『DEPARTURES』(1996)の歌詞には5つの謎があります。

  • 伏せられた写真立て
  • 左利き生活
  • 伸びた前髪
  • 強い風
  • DEPARTURESの最後のS

今回この謎に挑戦して、5つの点が見事に一本の線につながりました。

その結果、見えてきたのは、J-POP史上稀有なシチュエーションの男女の関係でした。

知らない方が、美しい歌のままだったのかも知れません。

ライナーノーツ

Artist globe
Lyric 小室哲哉/MARC(Rap詞)
Composer 小室哲哉
Original Release Year 1996年(平成8年)
Album

ファーストアルバム『globe』(1996,globe)

※12曲中の4曲目

Notes globeの歴代シングル売上No.1

3秒でワカる歌の概要

性格ちょいMな地方在住のミュージシャン志望の女子が、都落ちした自称アーティストの性格ちょいナル男に体よくフラれたにもかかわらず、彼への想いを断ち切れないで、新しい愛のカタチを探し続ける歌。

歌詞の意味

付き合っていた彼が自分の夢を実現しようと、入院生活の彼女を置いて、上京しようとする日。独り故郷に残された彼女は、彼との楽しかった事を思い出しながら、なんとか彼の愛が消えてなくならないように、新しい二人の生活を夢見て、すべての願いを託すものの、運命は冷酷にも彼女に冷たい風を送っている。

歌が生まれた瞬間を夢想してみた

性格ちょいMな地方在住のミュージシャン志望の女子が、都落ちした自称アーティストのちょいナル男に体よくフラれたにも関わらず、彼の愛を繋ぎ止めるために、寂しさをこらえて、彼と夢を共有できる新しい自分を見つける旅に出る決心をした瞬間に、『DEPARTURES』は生まれた。

歌の主人公

今度の舞台は、雪国・新潟。歌の主人公は、ミュージシャン志望のメグミ23才。生まれも育ちも新潟という地元っ子ですが、都内の短大を卒業して、2年ほど東京で「一人暮らしのOL」をやっていました。

10代から音楽にのめり込むものの、大人しくOLをしていたのは、どこか受身な性格があったのかも知れません。

地元に帰ってからは、東京でのデビューを夢見てボーカルトレーニングに励む毎日を送っています。

歌詞の意味を深く知るストーリー

地元の大型ショッピングモールでの仕事で知り合った、「アーティスト・コウジ」との出会いから、今回のJ-POP歌物語は、始まります。

あらすじを10秒でサクッとチェック

主人公のメグミは地元・新潟で活動する女性ボーカリスト。一年前に知り合った、メジャー再デビューを目指す都落ちアーティストのコウジと交際しています。ある雪の日、マンションに訪ねて来たコウジから、レコード会社からのオーディションのオファーを受けたことから、単身上京したいと告げられ、気が動転。立ち去ろうとする彼を追いかけた際に、階段から足を踏み外し、右肩を強打し、骨折してしまいます。その後、コウジは入院中のメグミを置いて、予定通り上京。メグミは、ひとり病室で彼への想いを募らせるのです。

ずっと写真立てが伏せられていた理由

scene#1 彼がレコード会社からのオーディションのオファーを受けたことから、東京生活を再開したいこと、その際、一人で上京したいことを告げられて、彼女がショックを受けるシーン。この時から、二人で撮った唯一のスナップを飾ってある写真立てが伏せられることになる。

足手まといの愛

ずっと続くと思っていました…。カレとの関係。

この先も、そして、将来も…。

今日、カレから告げられました。

ーこのチャンス、自分の音楽人生の最後のチャンスだと思ってる…。

ーだから、なの…?だからなの?

ー後悔したくないんだ。やれることは全部やりたい。

ーここじゃ、できないの?スタジオだってあるじゃない

ー送ったデモはミキシングがズタズタなんだ。東京のスタジオなら簡単にできる。それに…。

ーそれに…?

ー専任のボイトレを付ける。ウィークポイントの高域を当日までになんとかしたい。

ー……。

ーそれから…

ーもういい…もう…もう…。

コウジの凍ったような横顔が、窓ガラスに映っていた。

(彼の遠くを見る目…こわい。)

彼が帰った後、しばらく放心状態でした。

写真立てを伏せた理由

彼が再デビューを目指していることは、もちろん知っていました。

でも、それは二人の夢の一部だと思っていました…。

それが、違うなんて、思いもよらなかったのです。

ふと見ると、窓際の写真立ての中で、ふたりが笑っていました。

私はいけないものを見たように、慌てて写真立てを伏せました…。

涙が湧き上がって、どうしようもありませんでした。

(注)東京のスタジオでしかテープが作れないというのは、言い訳です。コウジの残酷な本心は、別にあります。ー分かりますか?

凍える夜でも待ち合わせできない理由

scene#2 もう一か月以上も、彼は彼女の部屋に姿を見せないまま、取り残された格好の彼女は、彼への想いが日一日と募っていく。深々と降り積もる雪の夜に、冷え切った部屋から独り窓の外の雪景色を眺めて、彼との一年を振り返るシーン。

私を選んだテキトーな理由

ーねえ、どうして私に声かけたの?

ーいやー、いちばん高音出てたから。(笑)

ーそれだけ?

ーそうだね(笑)

ーもぅー!

ーハハッー(笑)

メグミは、枕の向こうのコウジの首に抱きついた。

(あったかい…)

窓の外は白銀の世界が広がっていた…。

2つの心の真実がキツイ

メグミはブルッと震えて、毛布を肩に引き寄せた。

一年前は、あなたのそばにいたのに…。

暖房が追いつかないほどの冷え込みが、アパートの壁を染み通って来る。

(あなたが再デビューを目指してるってことは知ってたけど…。)

深々と降り積もる雪を眺めながら、コウジの言葉を思い出していた。

(今度の曲は、新しいコードを使ってみたけど、すごく深みが出たよ。)

音楽のことを語るコウジの眼差しは、いつも底知れぬ強さと熱が籠もっていた。

彼の再デビューを、心から願っているのは事実。

音楽を愛するミュージシャンとして、そして彼を愛する女性として。

…だけど、そばにいて欲しい。ふたりで同じ道を歩きたい。

それも、事実…。

2つの事実が、メグミの中で結末の見えないデッドヒートを繰り返している。

遊びに行けない事情

この気持ち、どうすればいいの?ーこの二つの気持ち、彼にどうかして伝えたいのに…。

メグミは、暗く光る白い街並みの向こうに、コウジの姿を見ていた。

そう言えば、ふたりでゲレンデに行ったこともなかったね…。

いつもお互いかけ持ちの仕事で、忙しくしていたし。

しんとした夜の静寂(しじま)に、当てのない想いだけが降り積もっていく…。

(…会いたい…)

窓辺には、あの夜からずっと伏せられた写真立てが、雪明かりで白く光っていた…。

前髪が伸びて右手が不自由だった理由

scene#3 突然彼が訪ねて来て、上京が来月に決まったことを告げられ、動揺する彼女。立ち去る彼にすがるように外に飛び出し、階段で足を滑らせ、右肩を強打。肩の骨折してしまうシーン。全治2ヶ月。右手が使えない不自由な入院生活が始まることになる。

最強の別れ台詞

あの夜、彼は急に訪ねてきたんです…。

ー来月3日、東京へ行く。

私の顔を見るなり、彼は私に告げました。

私はとっさに言葉が出ませんでした。

動転していたのだと思います。

ー………。

思い詰めたかのような強い眼差しが、じっと私を見つめていました。

ーそう……。

私もため息を吐くように答えるのが精一杯でした。

ーすまない…。

すまないーその言葉にどんな意味込められているのか、よく分かりませんでした。

少し目を伏せて、くぐもった声で、東京での生活のことを話してくれました。

オーディションは3月の初め頃になるとか、住まいは六本木のスタジオの近くだとか…。

今でも、はっきり覚えてないんです。

気がついたのは、彼が両手で私の肩を掴んで、こう言った時でした。

ーメグミ、落ち着いたら必ず連絡するから。

ーうん……。

逃走中の愛を追いかける

彼は、そっと肩から手を下ろし、後ずさりして私から離れました。

ーじゃあ。。風邪なんか、引くなよ。

ー……。

そう言って、くるりとドアの方に向き直ると、ノブに手をかけました。

ー……待って。私も行く。。

思わず口走ってしまったんです。

彼の手が止まりました。

ーいや、連絡するから…。

そう言った瞬間でした。彼は、勢いよくドアを開けて、飛び出しました。

ー待って、コウジ!

廊下を覗くと、一階へ下りる非常階段の方に向かうコウジの背中が見えました。

私も、目についた底厚の革のサンダルをつっかけてカギもかけずに飛び出しました。

彼の姿は、もう消えていました。

非常階段は屋外にあって、夜のうちに凍結した雪でびっしり覆われていました。

彼は、氷の剥げたところを選びながら、階段を駆け下りて行きます…。

これが最後の優しさ

私も、かまわず彼の後を追って、階段を降りかけた時…

(ズルッ)

あっと思った瞬間、私のサンダルは階段をすべり落ちて行きました。

ガーンと、右肩に焼けるような衝撃が走りました。

次の瞬間、ズルズルッと体ごと階段の下まで滑り落ちてしまいました。

ー痛いーっ!

ー大丈夫か!メグミ!

コウジは振り返って、駆け寄りメグミの身体に手をかけました。

(…うっ)

彼の手にしがみつかもうと、右手を伸ばしましたが、痛くて力が入りませんでした。

ーおい!立てるか?!

ーうぅん…。

コウジはあわてて携帯電話を取り出して、救急車

呼びました。

救急車が来るまでの間、コウジは着ていた革ジャケットを脱いで、私にかけてくれました。

ーコウジだって寒いでしょ…

私の言葉にも、彼は優しく微笑むだけでした。

ズレまくってます

…救急病院に運ばれて、その夜に緊急手術を受けました。

右の肩関節を骨折していました。左足首は重症の捻挫…。

全治2ヶ月でした。その夜から、病院での不自由な生活が始まりました…。

(こんな時に…。)

同じ想いでも、2人の思いはすでに微妙にずれていたのだと思います。

旅立ちの日に風が強かった理

scene#4

彼が上越新幹線で上京する日、不自由な入院生活にも少し慣れてきたメグミが、病室でこれからの2人のことを想い、彼との関係が新しい局面に入ったことを暗示するシーン。その日、風が強く吹いた理由も象徴的に明らかになる。

3つの謎が解けた!

彼が東京へ出発する日は、朝から強く風が吹いていました。

新潟駅にほど近い病室からは、一日に何度も発車のベルが聞えます。。

(今頃は新幹線のホームにいるの?)

独り病室で彼の旅立ちのことを考えると、どうしても落ち込んで来ます…。

(私は私でしっかりしないとね!)

左利きも慣れてきました。先週から体調を崩してひいてしまった風邪も良くなって来たし…。

自分を励ますように、ベッドからゆっくり立ち上がって、鏡に自分を映してみました。

(あらーずいぶんと前髪も伸びたねー。)

ー彼と同じぐらい…?

思わずそう呟いた途端、急に切なくなって来ました。

病院の場所がツラ過ぎ

その時、発車のベルが聞こえましたー。

彼を乗せた新幹線が、今まさに発車したような気がしました。

だんだんとスピードを上げて、私から遠ざかって行く…。

鏡の向こうには、連日降り積もった雪が白い壁のように。

ー鏡の中には、取り残された私…。

(もし私の気持ちが、彼にとって足手まといになるなら…)

そう考えると涙がこぼれました。

(彼の夢が叶ったら、新しい二人の生活が始まる…)

そんな夢想で自分を慰めました。

(新しい世界でもきっとうまくやっていける…)

彼の優しい笑顔が浮かんでは消えました。

この歌の最大の謎が解けました

今の私と彼を支える一本の糸。

それは、音楽への夢です。

(あなたの夢が私を選んだ…。)

メグミの頭の中では、自分の夢と憧れが、全速力でTOKYOへと向かう彼の姿と重なって見えました。

あなたの夢はー私の夢よ。

あなたが私を選んでくれたから、私の夢もあなたに預ける…。

あなたの優しさも、

私のわがままも、

あなたの手のぬくもりも、

あなたのいない寂しさも、

すべては、あなた次第で…

私は、彼の夢を追いかける細く長い道のりが、いつの間にか始まっていたことに、気づきました。

新潟の空の風は、二人をそれぞれの未来へと、強く、強く吹き流そうとしているかのようでした。

(終)

こんな人にオススメ

  • 価値観の違う恋人に悩んでいる人
  • フラれた元カレが忘れられない人
  • 雪国にひとり旅する人

メッセージ

departureではなく、departuresである事。これは和製英語と言っていい不自然な複数形です。

あえて複数形にしているのは、二人のそれぞれの旅立ちを意味しています。二人の道は、もはや一つではなく、二つに分かれてしまったという事。

二つの道が将来もう一度一本の道になる可能性は、ひとえにコウジに懸かっています。

仮りに成功したとしても、彼がメグミの元に、これまで通りのコウジして戻って来る保証なんぞ、ありはしません。

メグミに自ら未来を選ぶ道はなく、ひたすら望ましい未来が選択されるのを待つしかありません。

こんな理不尽で悲しい恋ってあるでしょうか?

ーそれとも、これは恋なのでしょうか?

もう一度、あなた自身の耳で確かめる必要がありそうです。