『木蘭の涙』の歌詞の意味は元介護女子の憂鬱と恋情の物語だった

『木蘭の涙』の歌詞は、全9節からなり、500文字程度の比較的コンパクトにまとめらた詩句から構成されています。

冒頭の「逢いたくて」から、結びの「置き去りに」まで、感情的なフレーズと抒情的なシーンの2種類のブロックが巧みに配置されて、聴く者の心を揺さぶります。

今回は歌の主人公を「女性」と想定したことで、またまた涙腺が崩壊する歌物語の誕生となりました。

リリースノート

Artist スターダスト・レビュー
Lyricist 山田ひろし(Yamada Hiroshi)
Composer 柿沼清史(Kakinuma Kiyoshi)
Original Release Year 1993(平成5)
Album スターダスト・レビュー「SOLA」(ワーナーミュージック・ジャパン)※1曲目
Notes

発表されて10年を過ぎる頃から、続々と多くのアーティストによってカバーされるようになった。

<2010年代の代表的カバー>
松崎しげる(2015,アルバム「Watashi no Uta」)
林部智史(2016,アルバム「あいたい」)
谷村新司(2017,アルバム「STANDARD~呼吸~」)

歌の概要

長い闘病生活も空しく亡くなった彼が来たがっていた病院近くの丘の上で、彼との思い出に最後のお別れをしようとしたけれど、ある奇蹟的な出来事のために、今なお彼への感情を整理できずに葛藤している歌。

歌が生まれた瞬間

2年間の闘病生活の後に、昨年亡くなった彼の治療費の残債をバイトをしながら貯めたお金で分納して来たが、最後の支払いを終えたことで、気持ちにひと区切りつけようと彼が来たがっていた丘に登ったところ、彼が好きだった紫木蓮がひときわ咲き誇っていて、まるで自分の事を忘れないでと訴えているようで、思わず大粒の涙が溢れた瞬間に、『木蘭の涙』は生まれた。

10秒でわかる歌詞の意味

毎年4月の終わりになると、木蓮の香りに誘われるように、他界した元カレに対する積年の想いが胸の奥から沸き起こって、押さえることが出来ません。

彼の治療費を払い終わった日、彼が好きだった紫木蓮の香りに彼が招魂して、さよならを告げようとした私に、「逢いたい」と囁いたあの出来事が今でも鮮明に蘇るのです。

あの日の出来事以来、私の中では今でも、逢いたい気持ちと、逢えない辛い感情が葛藤を繰り返しています。

10秒じゃ物足りない方のための歌詞徹底攻略!

『木蘭の涙』の歌詞の意味を解釈する上での重要な4つのポイントを、箇条書きにしてみました。

  1. 木蘭の涙は二つの意味がある
  2. 介護疲れが物語の背景らしい
  3. 丘の上の不思議な出来事について
  4. 二つの感情が葛藤する主人公

それぞれ5秒程度でご説明したいと思います。

木蘭の涙は二つの意味がある

「木蘭の涙」とは、紫木蘭に招魂した彼の魂が流した涙と、木蓮の花を見るたびにそのことを思い出して流す私(主人公の女性)の涙の両方が込められています。

介護疲れが物語の背景らしい

主人公の女子には、彼の長い闘病生活を支えてきたことから、「ずっと頑張って来た」「一緒になれる日を待っていた」という積年の思いがあります。

丘の上の不思議な出来事について

彼が来たがっていた丘の上には、彼が好きだったモクレンの木が一本植わっていて、彼に別れを告げようとした私に、彼の魂が招魂して「ずっと逢いたい、行かないで」と囁いた奇蹟が起こりました。

二つの感情が葛藤する主人公

丘の上の不思議な出来事いらい、彼に逢いたい気持ちと、逢えないことによる辛い感情が葛藤を繰り返しています。

…いかがでしょうか。『木蘭の涙』の奥深い物語が、なんとなくイメージしてもらえたと思います。

スターダスト・レビューの根本さんが、万感の想いをこめて歌っている理由がよくわかりますね。

歌詞を深く知る仮想ストーリー

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この歌の主人公は、緑豊かな地方都市に住む38歳のシングル女性さやかです。

第1章 涙の物語のはじまり

(退院したら、あの丘に二人で行こう。)

そんな会話も空しく、去年の4月にーちょうどその年の木蓮の蕾がふくらみ始める頃…。

あの人は、まるで花の香りを追うように逝ってしまったー。

二人のすべてが終わった…

残っていた治療費の最後の分納も、やっと今日収め終わった。

もう、この病院に来ることもないだろう…。2年間二人が恋を紡いだ場所。

そうだ、あの丘に登ってみよう。

二人で病室の窓からいつも眺めていた、あの丘に。

さやかは、青い空の下で輝く緑の丘に、ゆっくりと視線を投げたー。

第2章 2年間の闘病生活の思い出

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出会ってからわずか一年で始まった闘病生活の間にも、二人は寄り添いながら恋の道を歩んできました。

突然の闘病生活のはじまり

あなたと付き合い始めて一年ぐらいした頃、あなたが重い病気にかかっていることを知らされました。

その時勤めていた会社の健康診断で、胸部レントゲンに影があると言われれ、大きな病院に二人で精密検査に行ったのよね。

それは、今まで一度も聞いたことのない長い病名で、一回では覚えられなかったことを覚えています。

主治医から根治は大変難しいと言われ時、私はただ俯くことしかできませんでした。

これから、二人で一緒に暮らそうねって言ってた矢先だったのに…。

それからの2年間は、毎週のように病院通い。

そして、精密検査やらリハビリのためのやらの入退院を繰り返して…。

二人でゆっくりお出かけした思い出も数えるほどしかないくらい、忙しい闘病生活が待っていました。

花かごの秘密を知ってますか

春になると、私は花かごを用意して、あなたの病室に持って行ったものです。

あなたが香りが好きだった紫木蘭の花を、こっそり入れて。

木蓮なんて、売ってないから、実は近所のおばさんちの庭先から、こっそり頂戴してきたのよ(ナイショ)。

あなたは、香りで気づいてくれて、嬉しそうに花かごを抱えて中をのぞきんでいたよね…。

そんな笑顔を見つめているだけで、私は幸せでした。

そんな幸せしか…なかった。

他には、なんにも約束されていなかった。

何も見えなかった。

ずっとキミのそばにいるから

ベッドの中のあなたから、「きっと良くなる。ずっとキミのそばにいるから」と励まされて…。

私の方が、あなたより優しくならなきゃって思ったのよ…。

あなたが頑張ってるのだから、私も頑張ろうって思ってた。

ふたりの夢が宿る緑の丘

緑の丘は、通称「志恩の丘」(仮称)と呼ばれていて、最後の病室になった南側の窓からよく見えました。

5月もほど近い頃になると、爽やかな風に丘をつつむ緑の樹々が、波打つように輝いて本当に清々しい気持ちになったものです。

青と緑のツートンカラーの大きな絵を前に、横になっている彼の姿が、ひどく神秘的な絵のように見えたことを今でもはっきり覚えています。

ーワッ!

ーえっ?あー、さやかか。びっくりしたー。全然気がつかなかったよ(笑)

ー今日は一段とキレイね、あの丘。

ーそーなんだよ。今年は天気がいいみたいだから、良く見える。

ー登るんでしょ?あの丘に。二人で。

ーそうだよ!退院したら、あの丘に真っ先に登ろうよ…希望の丘だからね…。

ーそうね。

(うたzine『志恩の丘の奇蹟』より)

ふたりの未来が消えた春

亡くなる前の年に、たしかそんな会話を交わした記憶があります。

翌年、木蓮の花が咲く頃、彼は静かに息を引き取りました。

去年は、3月に記録的な大雪が降るほどの大寒波に翻弄された年。

年の初めにひいた風邪から肺炎を惹き起こしてしまったのです。

免疫力がおそろしく低い状態の彼に、それは致命的な打撃となりました。

出会ってから3年にわたって紡いできた二人のすべてが、静かに消えていったのでした-。

第3章 私を変えた丘の上の出来事

彼を失ってから一年。私は懸命に働いて頑張ってきました。前に進むために。

彼の残したもう一つのもの

彼は3人兄弟の中の末っ子でした。父親はすでに他界していて、母親も相当に年配の方でしたが、私たちの交際は耳にしていたようです。

長期におよぶ闘病生活や高額の治療費については、親元から断続的に送金されていたようですが、実家の経済状況もきびしいものがありました。

そこで、私の方から彼のお母さんに申し出て、すこしお手伝いすることになったのです。

そこまでしなくてもと思ったのですが…。彼との縁を切るような気がして、知らない顔をする気にとてもなれなかったのです。

50万以上の療養費の分納を、病院の事務長さんに事情を話して、彼女が1年かけて毎月少しずつ払うことになったのは、そういういきさつだったのです。

あの丘に登ってリセットしたい

ー息をふぅと吐いて、最期の岩の階段を登った。

志恩の丘の頂きは、やはり女性の足ではキビシイものがありましたが、この日が何かの最後の日のような気がして、なんとか汗をぬぐいながら足を進めてきました。

さやかの前には、想像以上に素晴らしい眺望が広がっていました。

吹き上がる新緑の風に波立つような緑の向こうに、二人が出会ったこの街全体を見下ろすことができました。

(わぁ、スゴい!)

青と緑のツートンカラーが、さやかの汗ばんだカラダを包み込んで、やわらかく迎えます。

(…やっと終わった。…長かった。)

そう思うと自然と目頭が熱くなりました…。

この一年、彼の残した療養費の分納をアルバイトやらパートをしながら返済してきましたが、それも今日でお終いです。

彼にお別れを告げるようとした私

久しぶりに彼の名前を、そっと呟いてみました。

…私、頑張ったよね。あなたとは未来を作れなかったけど、この一年の間、毎日自分の人生を積み重ねてきた。

あなたと目指した夢のカタチじゃないけど、あなたからもらった幸せのカタチかも知れないと思って、懸命に頑張ってきた。

(ありがと。)

さやかは、やっと彼とのことを「過去」として静かに受け止められるような気がしました。

さよならしよう…。そして、これから自分の人生を新しく見つけに行こう。それしか前に進むことが出来ないから。悲しみの中で崩れないようにするためには、それしかない。

(さ・よ・な・ら…)

ー丘の上の奇蹟が起こったのは、その時でした。

紫木蘭に招魂した彼のささやき

後ろを振り返り、遠くに見える病棟に向かって、「さよなら」を言おうとした時、覚えのある香りが彼女の鼻腔をくすぐりました。

あっ?ー泡立つような香り…。モクレンでした。

はっとして振り返ると、一本の大きな紫木蘭の木が、ピンクの花々を天に向けて咲かせていました。

…その時です。

どこからか「逢いたかった。もう行かないで」と、ささやき声が聞こえました。

驚いて周囲を見渡しましたが、もちろん丘の上には人影はありません。

……次の瞬間、彼女はすべてを了解しました。

ぐっと胸が詰まり、涙が溢れそうになるのこらえて、モクレンの木立を見上げました。

無数の花びらが春風に微かに揺れているだけでしたが、きっと、大好きだったモクレンの花に彼の魂が招魂して、私に囁いたのだと思いました。

そう思うと、さよならを言いかけていた今までの気持ちが、グラグラしてしまい、彼にもう一度逢いたい気持ちが湧き上がってきて、涙が止まらなくなってしまったのです。

さやかは、それでも苦しげに歯を食いしばり、何かを引き剥がすように、ゆっくりとに前に向き直りました。

眼下に広がる眺望に視線を投げ、(さようなら…)と呟こうとしましたが、唇は虚しく震えるばかりです。

気がつくと、何度も振り返り、満開の木立に視線を彷徨わせている自分がいました…。

 

それは、彼が亡くなったちょうど一年前と同じ4月の最後の土曜の午後でした。

第4章 どこまでも揺れ続ける心

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あの時の二人の夢が宙ぶらりなんですーいつ叶うとも分からない夢に泣いて、叶えられなかった夢にもう一度泣く。

そして、彼に逢いたい気持ちと、逢えないことによる辛い感情が葛藤を繰り返す毎日…。

モクレンの花なんか見たくない

丘の上の出来事があって以来、私はモクレンの花を避けるようになりました。

モクレンの花を頂戴していた近所のおばさんちは、駅への通り道にあるのですが、今でも避けるように歩いています。

春にもなれば、近所を歩く時は、モクレンの花の香りを嗅がないように、マスクを二重にしています。

ゴールデンウイークも大嫌い

毎年GWが近づくと、日本中が大はしゃぎ。どこに行っても幸せそうなカップルで溢れてるますよね。

そんな時、雑踏の中を知らないうちに探してしまうんですー彼の姿を。

いつまでも側にいるからと言っていたあなたは、そんな私の姿をずっと見ていてくれますか。

ー私を置き去りにした代わりに。

最後に。紫木蘭の花言葉を知ってますか?

紫木蘭の花言葉は「持続性」だと最近知って、胸が苦しくなりました。

だって、あなたが還って来ない現実がいつまでも続くなんて。

そんなことがずっと続く未来なんか…。

 

私、いらない。

(終)

おすすめの人

  • 二人で幸せになる夢が叶わなかった人
  • 最愛の人を亡くしてしまった人
  • 切な過ぎる歌が聴きたい人

メッセージ

あの人を好きだという気持ちを、決して諦めないでください。いつまでも、その気持ちを持ったままで生きて欲しいのです。もし、辛くなったら、この歌を聴いてください。自分のやってる事は無意味だとか、間違ってるかも知れないとか、そんなことはどうでもいいと思えるようになります。
ーいつまでも好きでいる方が、人生勝ち組なんで。
 
(ここまでお読みいただきありがとうございました。)